制作会社から「ヘッドレスCMSを使った方がいいですよ」と提案されたとき、正直よくわからないまま進めてしまう方は少なくありません。
この記事では、ヘッドレスCMSの仕組みからWordPressとの違い・費用・主要サービスの比較まで整理します。提案を受けたとき、自社に本当に必要かどうかを判断する材料にしてもらえればと思います。
ヘッドレスCMSとは何か
ヘッドレスCMSとは、コンテンツの管理画面(バックエンド)と、実際にユーザーが見るWebサイトの表示部分(フロントエンド)を切り離した構成のCMSです。
従来のWordPressは「管理画面でコンテンツを作成すると、決まったデザインで表示される」という一体型の仕組みです。ヘッドレスCMSはこの表示部分("head")を切り離し、コンテンツのデータだけをAPI経由でフロントエンドに渡します。
従来のCMS(WordPress等) は、コンテンツの管理から表示まで一体になっています。管理画面で記事を書くと、そのままテーマのデザインに反映される仕組みです。
ヘッドレスCMS は、管理画面(コンテンツ)と表示部分を切り離しています。管理画面で入力したデータをAPIで受け取り、Next.jsなどのフロントエンドが好きな形で表示します。制作の自由度は上がりますが、その分フロントエンドの開発コストがかかります。
なぜ最近よく提案されるのか
開発者向け調査「State of JS 2024」では、Next.jsやAstroなどのフロントエンドフレームワークが多くの開発者に使われていることが示されています。こうした技術の普及により、サイトの表示部分を自由に設計し、静的生成やCDN配信を活用しやすくなりました。
企業側でも同様の動きがあります。WP Engineの「The State of Headless 2024」では、米国・英国・オーストラリアのIT・マーケティング担当者1,015名を対象にした調査で、回答企業の73%がヘッドレス構成を採用しているとされています。
制作会社がヘッドレスCMSを提案する背景には、技術トレンドへの対応と、Googleのページ評価指標であるCore Web Vitalsへの対応という2つの理由があります。ただし、すべての会社にヘッドレスCMSが必要なわけではありません。
WordPressとの違い
ヘッドレスCMSをWordPressと比較したとき、違いは主に「速度・柔軟性・運用のしやすさ・費用」の4点に集約されます。
| 比較項目 | WordPress | ヘッドレスCMS+Next.js |
|---|---|---|
| 表示速度 | 構成次第 (テーマ・プラグイン・サーバーの影響を受ける) | 高速化しやすい (静的生成・CDN配信を活用しやすい) |
| セキュリティ | 対策が必要 (本体・プラグイン更新が重要) | 攻撃面を減らしやすい (ただしAPI・権限管理は必要) |
| 運用のしやすさ | 高い (管理画面に慣れている人が多い) | 設計次第 (入力は簡単でも構成変更は開発が必要) |
| デザインの自由度 | 中程度 (テーマや管理画面設計に左右される) | 高い (表示部分を自由に設計しやすい) |
| 制作費用 | 20万〜100万円 | 50万〜200万円 |
| 月額運用費 | 1万〜5万円 | 1万〜8万円 |
| プラグイン資産 | 豊富 | 限定的 (独自実装が必要な場面が多い) |
| 複数チャネル配信 | 可能 (API設計が必要) | 得意 (Web・アプリへ配信しやすい) |
WordPressとヘッドレスCMSの選定基準については「WordPress外注の費用相場と失敗しない発注方法」でも詳しく解説しています。
主要サービスと費用相場
ヘッドレスCMSには複数のサービスがあります。日本国内で比較されることの多い4つのサービスを費用とともに整理します。
※料金・プラン内容は2026年6月時点の公式料金ページ(microCMS / Contentful / Sanity / Strapi)をもとにした目安です。実際の契約前には、必ず各サービスの最新料金を確認してください。
| サービス | 無料プラン | 有料プラン | こんな会社に |
|---|---|---|---|
| microCMS(日本製) | Hobby:0円/月 最大3名・API最大5個 | Team:月額4,900円〜 Business:月額75,000円〜 | 日本語管理画面・国内サポートを重視する企業 |
| Contentful | Free:0円 10ユーザー・100K API calls/月 | Lite:月額$300〜 Premium:個別見積もり | 多言語・グローバル展開、複数拠点での運用 |
| Sanity | Free:0円 20席・2 datasets | Growth:月額$15/seat〜 Enterprise:個別見積もり | コンテンツ構造を細かく設計したい開発者主導の案件 |
| Strapi(OSS) | Self-hosted:無料 サーバー費用は別途 | Strapi Cloud:月額$18〜 上位プラン・Enterpriseあり | 自社でサーバー運用・カスタマイズを管理できる企業 |
制作費用の全体感
ヘッドレスCMSを導入したサイト制作の費用は、ページ数・CMSで管理する項目数・更新画面の作り込み・公開後の保守範囲によって大きく変わります。以下は、RINIAでの相談内容や一般的な制作工程を踏まえた目安です。
| 規模 | 制作費用 | 月額費用 |
|---|---|---|
| 小規模コーポレートサイト(5〜10ページ) | 50万〜100万円 | 2万〜5万円 |
| 中規模コーポレートサイト(10〜30ページ) | 100万〜200万円 | 3万〜8万円 |
| 採用サイト・メディアサイト | 80万〜200万円 | 3万〜8万円 |
WordPressに比べて制作費用が1.5〜2倍程度になるケースがある理由は、フロントエンド開発(Next.js等)とCMS設定の両方を担えるエンジニアが必要になるためです。ただし、既存テンプレートの活用や管理項目の少ないサイトでは、費用差が小さくなることもあります。
向いている会社・向いていない会社
| 向いているケース | 向いていないケース |
|---|---|
| 表示速度がコンバージョンに直結する (EC・採用サイトなど) | ページ構成やレイアウトを 非エンジニアだけで頻繁に変えたい |
| Web以外のチャネルにも 同一コンテンツを配信したい | 予算が100万円未満 |
| セキュリティ要件が厳しい (金融・医療・行政など) | WooCommerceプラグインを活用したい |
| フロントエンドの設計に 高い自由度が必要 | 制作後の保守を自社で対応したい |
制作会社に確認すべき3つの質問
制作会社からヘッドレスCMSを提案されたとき、以下の3つを必ず確認してください。提案の根拠が曖昧な場合は、WordPressで十分な可能性があります。
1. 「WordPressではダメな理由は何ですか?」
これが最も重要な質問です。「最新技術だから」「速いから」という曖昧な理由であれば、WordPressでも要件を満たせる可能性が高いです。
「御社のサイトは更新頻度が高く、表示速度がコンバージョンに直結するため」「複数のチャネルに同一コンテンツを配信する要件があるため」など、自社の要件に基づいた理由が出てくるかどうかを確認してください。
2. 「更新作業は自社のスタッフでできますか?」
ヘッドレスCMSの管理画面は、入力項目が整理されていれば使いやすくできます。一方で、テキストや画像の更新はできても、ページ構成の変更やレイアウト修正には都度エンジニアへの依頼が必要になるケースがあります。
更新頻度・更新内容・担当者のITリテラシーを踏まえて確認しましょう。
3. 「5年後の保守体制はどうなりますか?」
ヘッドレスCMSは、WordPressに比べると構成が案件ごとに異なりやすく、引き継ぎ時にコードや設計資料の確認が重要になります。制作を依頼した会社が廃業・撤退した場合、ドキュメントが不足していると別の会社に引き継ぎにくいリスクがあります。
コードのオープン性・ドキュメントの整備状況・引き継ぎの条件を事前に確認しておくと安心です。
判断フロー
以下の質問に順番に答えることで、ヘッドレスCMSが必要かどうかを判断できます。
| ステップ | 質問 | はい | いいえ |
|---|---|---|---|
| 1 | 表示速度が 最優先事項か? | ステップ2へ | WordPressを優先検討 |
| 2 | 予算は 100万円以上あるか? | ステップ3へ | WordPressを優先検討 |
| 3 | Web以外にも配信、または フロントを自由に設計したいか? | ヘッドレスCMSが 適している | WordPressでも 対応可能 |
まとめ
ヘッドレスCMSは、表示速度・セキュリティ・柔軟性の面で有利に設計しやすい一方、費用と運用の複雑さも増えやすい構成です。制作会社から提案されたときは「WordPressではダメな理由」を必ず確認し、自社の要件と照らし合わせて判断してください。
CMS選定の段階から、どちらが自社に合うかを一緒に考えたい方は、RINIAのヘッドレスCMS構築サービスをご覧ください。「ヘッドレスCMSを提案されているが、自社に本当に必要か判断したい」というご相談も受け付けています。